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2022年7月14日 放送
店舗を増やさず成長遂げる
驚きの「のんき経営術」

- メルヘン 社長 原田 純子(はらだ じゅんこ)
旅行や帰省、出張など、遠出する機運が見え始めた中、移動時に手軽に食べられると、駅ナカで人が集まる行列店がある。それが40年続く小さなサンドイッチ専門店「メルヘン」。人気の秘密は、営業部隊を置かず、店の拡大を抑え、売り上げも追わないと言う「のんきな経営」スタイルにあった。一方で、客を喜ばすために商品作りには徹底的にこだわっている。
放送内容詳細
年間300種類で客殺到!現場主義のサンドイッチ店
メルヘンのサンドイッチ、目を引くのが色とりどりの商品の多さ。ショーケースには常時30〜40種類が華やかに陳列され、季節ものを含めると年間で約300種類のメニューが登場する。人気シリーズの「フルーツサンド」を始め、素材にこだわったローストビーフやカツ、卵といった定番物から、体に優しい人参サラダ、レンコン、チーズかぼちゃ包み揚げなどの独創的なものまで。社長の原田は、「ご飯に合うものならパンにも合う。極端にいえば刺身でも合う」という持論があり、だから「浅草今半すき焼きサンド」なんて商品も。常に出来立てを味わってもらおうと、メルヘンでは工場を持たずに27店全てに厨房が備わっている。野菜はその場でカット、クリームもその場でホイップするのでふわふわの食感となる。素材へのこだわりも強い。特にパン生地に関しては、発酵させる機械、生地をこねる機械などシステム作りからメーカーと開発してきた。あらゆる具材を挟んでも重たくならない口どけの良さと、余計な味がないご飯のような素朴さが特徴だ。卵は一個60円もする高級品ヨード卵・光を使用、カツは国産の三元豚を店で揚げて、フルーツも「岡山市産の清水白桃」「宮古島産のマンゴー」など、原田や社員が現地を訪れ決めている。商品を売るための工夫も忘れない。例えば、27店中一番の売上を誇る東京駅内の「エキュート東京店」では、メニュー数を他店よりも少ない数に絞り込んだり、セットメニューを作っている。新幹線の発車時刻など、限られた時間の中で購入する客が多いため接客時間は1人約30秒。「迷わせない、短時間で選べるようにする」ため、店内から余計な情報を排除している。また、メルヘンには営業社員もいない。営業しなくても誘致の話はひっきりなしに来るのだが店舗数を拡大するつもりはないという。身の丈にあった“のんきな経営”で常に気持ちにゆとりをもった商売をしていきたいと原田は言う。
大繁盛で思い知らされた教訓 目指すは「のんきな経営」
社長の原田純子は、勤めていた食品販売会社から32歳で独立し、東京都・田無市に小さなサンドイッチ専門店「メルヘン」を創業した。美味しいサンドイッチを丁寧に作る店にしよう、ただし絶対に無理はしないと「のんきな経営」を目指した店づくりを目指した。次第に口コミで評判を呼び人気店となると出店依頼が殺到。しかし店の拡大と同時に、お客も増えていくと「のんき」とは真逆な忙しさに追われる店に。社員たちは疲弊し辞めていく者が続出。売上が上がっても、喜ぶものは誰もいなかった。原田は「のんきな経営」のためには、常に余裕を持って判断を下す状態が必要とあらためて感じる。メルヘンでは店舗は増やさず25~27店をキープ、身の丈にあった経営を心掛けている。そんなメルヘンもコロナ禍では大打撃を受けた。東京駅の店では1日100万円超の売り上げが、2、3万円という状態に。しかし、原田はそれを社員が育つ環境づくりに生かした。「売れない店とはこういうこと」と自覚させ、来てくれる客へのありがたみ、安い売り上げでも利益を出すことなどを学ばせた。一方で、お家需要で客が増えた郊外の店舗には、「売れる」ということを学ばせた。コロナ禍での経験が、どんな店舗にも対応できる人材を育てることに繋がったという。2022年の6月期の決算では見事V字回復を果たした。
ゲストプロフィール
原田 純子
- 1950年山梨県生まれ
- 1982年サンドイッチハウスメルヘン 創業
- 2010年駅ナカに進出し、人気を呼び込む
- 2022年今年40周年
企業プロフィール
- 住 所:東京都八王子市散田町3-7-18
- 創 業:1982年
- 売上高:20億円
- 従業員:282名(パートなど含む)
- 店舗数:27店舗

会社名はメルヘンだが、経営はリアルだ。のんきな経営などと言っているが、余裕を持って判断をくだすだけで、単純に「呑気」なんかではない。コロナで都心部の売上は落ち込んだが、郊外店では行列ができた。創業以来、味を追求してきた。他社のことは考えたことはなかった。客の口コミで広がっていったので、宣伝や営業に力を入れる必要もなかった。ただし、卵を茹でることから全店、すべて店内厨房で作る。コストがかかる。だが、そのコストが、メルヘンを日本一にしている。