ゲームセンターワタナベ 営業日誌

営業日誌#10

1997年

高野が海外に行ってしまった。

本当に行ってしまったのだろうか? おれと向き合うのが恥ずかしくて、実は日本にいるんじゃないだろうか? ――そうだ。そうに決まっている。高野は、ちょっと、ファッション雑誌では有名な編集者になった、って聞いた。そんな高野と、借金まみれのゲーセンの店長じゃ、社会的には釣り合わないもんな。職場の友達に紹介できねえもんな。だから、海外に行くって、言って、ちょっと距離を置こうとしてるのか?

そりゃ確かに、『トゥルー・ラブストーリー』を遊んでる時に思わずのぞみちゃんのこと「高野!」って呼んで、気まずい感じはあると思うけど……。でも、高野も、おれのこと、絶対好きだって思ってる。だってあいつ、「止めるなら今だよ、いつもの公園で待ってるから……」って、言ってた。聞き間違いなんかじゃない。どう考えてもおれのことが好きだ。大丈夫だ……大丈夫……でも……、じゃあ、なんであのとき、追いかけたのに、タクシーを止めてくれなかったんだろう。

あれから店に戻ったら、借金取りが来ていた。常連を置いて木戸に電話してみたけど、話が違う。この前はお金貸してくれるって言ってたのに、「礼治くんの問題です」って、電話を切りやがった。どうなってるんだ? おれの問題って言われても、『バーチャファイター2』の頃みたいに、格闘ゲームの客は来なくなった。結局、残ったのはマニアばかりだ。ほかの新しい台も入れてきたけど、『バーチャファイター3』は仕入れられなかった。どうすりゃいいんだ。木戸は店をやれって言うくせに、口だけじゃねえか。店に来るわけでもないし。何様のつもりなんだ? このままじゃ、店、潰れちまう。どうしよう。どうしよう。

……結局、高野も、木戸も、いなくなっちまった。なにが「ゲーセンワタナベは大事なところだから」だ。結局、大事なときには何もしてくれないじゃないか。これから、どうしたら、いいんだろう。

GAME

  • 『トゥルー・ラブストーリー』 アスキー(現)株式会社KADOKAWA エンターブレイン)
    1996年12月13日発売

    1994年の『ときめきメモリアル』のブレイク以降、「恋愛シミュレーション」というジャンルが開花。『ときめきメモリアル』はPCエンジン SUPER CD-ROM2向けだったが、時代としてはすでにプレイステーション、セガサターンとCD-ROM標準搭載機が登場する年。ボイス、グラフィックともに大幅に強化され、ゲームの大容量化が標準になったころ。この後押しもあり、女性向け恋愛シミュレーション『アンジェリーク』、成人向けゲームからの移植『同級生』など、多くの恋愛シミュレーションが登場した。『トゥルー・ラブストーリー』はその中の1本で、引っ越しまでの1か月を舞台として、「せつなさ」と「普通っぽさ」を全面に押し出してヒット。単なる育成ゲームではなく(主人公の育成はない)、「下校会話システム」により、お目当てのコと会話をいい感じで会話を盛り上げつつ下校する点が斬新だった。盛り上げすぎると相手が緊張して会話終了、話が盛り上がっていないとそれはそれで終了。劇中の高野と同じく、下校時の会話が当時としては珍しいアニメーションで行なわれる点も眩しかった。

  • 【画像】鉄拳3
    『鉄拳3』 ナムコ(現バンダイナムコゲームス) 1997年3月稼働開始

    1994年から続く『鉄拳』シリーズの第三弾。『2』から19年後、一八と準の間に息子・仁が生まれたという設定が話題を呼んだ。今回から奥行き方向への移動も可能。恋愛シミュレーションが主役の回なので、少ししか映らないが、『バーチャファイター2』以降のゲームセンターワタナベは資金難により基板コストが約半額の『鉄拳3』推しに移行する。ゲームの質は価格ではなく、もちろん上記のゲームにも優劣はないが、店舗運営においては『バーチャ』派、『鉄拳』派と、“持っている”客の好みを読み違えると、閑古鳥となる可能性がある。『バーチャファイター2』でそこそこ有名になっていたであろうワタナベが、『鉄拳』に宗旨変えしたことにより、もしかしたら経営が苦しくなっていたのかもしれない。さてこの『鉄拳3』、システム基板としてはプレイステーションベースの「システム12」を採用している。基板のコネクタが旧規格の「JAMMA」と新規格「JVS」の合いの子で、なんと両方のコネクタが実装されている。『鉄拳3』の家庭用は1年後の1998年3月に発売されたが、「システム12」の仕様をそのまま落としこむことはできなかったため、ゲームに影響のないところでアレンジが加えられている。

    TEKKEN OFFICIAL(外部サイト)
    鉄拳ポータルサイト
  • 【画像】ヴァンパイアセイヴァー
    『ヴァンパイアセイヴァー』 カプコン 1997年5月稼働開始

    カプコンの格闘ゲームといえば『ストリートファイター』シリーズだが、ほかに、と言われるとこの『ヴァンパイア』シリーズなどがある。(ほかにもまだまだあります)。カプコンが誇る2Dグラフィックの極みが堪能できる。使えるキャラクターは世界各国から選りすぐりのモンスター(ダークストーカー)たち。怪物をプレイヤーキャラに据えることで、人型のキャラクターではできない表現を可能にし、ビジュアル面、戦略面ともに飛躍的な進化を遂げた。ファンの熱い要望により、2013年春にPS3/Xbox 360で高解像度になりオンライン対戦が可能な『ヴァンパイア リザレクション』(『ハンター』、『セイヴァー』を収録)が発売された。

    ヴァンパイア リザレクション(外部サイト)
    対応機種:PlayStation 3/Xbox 360
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