勝村コラム

2018年11月 4日(日) 獣道

昔、たんぽぽ倶楽部というドラマをやらせていただいた。内容はだいぶ忘れちゃったけど、働くのが面倒臭くて、楽に稼げる仕事を見つける。んで、人を集めて失敗する。

まぁ、人も集まらず、大したことにもならないんだけど、その楽して儲けようと企む若者役だった。彼は、どこの道端にも咲いている、たんぽぽを使って金儲けを企む。

発想は悪くない。必要を生み出すってのは、いつもそんなものだろう。彼のたんぽぽ倶楽部は失敗に終わった。芸能でも、スポーツでも、なんでもそうだけど、パフォーマンスを披露する場には、観客が必要である。

優れたパフォーマンスにはたくさんの観客が集まり、木戸銭(古いね)は高騰する。観客は、優れたパフォーマーを追いかけ、各地域をまわる。そこに経済的な問題が出てくる。余程経済に余裕がないと、パンクしてしまう。Jリーグでも、札幌や沖縄はもちろん、近郊でも毎週となると、経済を圧迫する。

この問題を解決するのは、至難の業である。その至難の業を身につけたのが、今回のブレイン村上アシシくん。アシシくんは以前にも番組に出ていただき、いろいろな楽しい話をしてくれた。

トゥーロンのU23の大会を番組で取材に行った。日本人のほとんどいない、寂しいスタジアムでもアシシくんと会って、同じ体験をした。トゥーロンでのU23の代表選手たちの戦いを間近で観て、アウェイがどれだけ大変なのか、この世代の戦いがどれだけ大変なのかを実感することができた。

トゥーロンのことも、以前に書いた気がするから省くが、U23の代表の捉え方が、、大会の捉え方が、日本とはまるで違ったのだ。

日本はこの世代の代表でも、チームとして戦うことを最優先にする。日本人としては、当たり前の考え方だ。しかし海外では、この世代に選ばれることは、A代表に選ばれる可能性がほとんどない。と捉える。

だから、チームよりも、個人を優先させる。突出した個人を前面に出して、自分を売り出すのだ。人数は少ないが、スカウトももちろん来ている。スカウトは、チームではなく、個人を観に来ている。

日本と海外の世代の戦い方の違いを知ることができた、貴重な経験だった。まぁ、日本と海外なんて書き方をすることが、不思議なんだけど。

その場所にいなければ、わからない。テレビの前で観戦しているだけでは、絶対にわからないことだらけの、本当に貴重な経験だった。そのアシシくんが、貴重な経験だらけのアシシくんが、まだ誰もしていない、誰も歩いていない道を歩き始めた。

アシシくんは、実体験で様々な真実を肉眼で見てきた。

「半年だけ働く。」

というアシシくんの本を読んだ。

アシシくんが、何故こんな生き方ができるのが、一般人には理解できないと思う。その「何故」の理由が書いてある。アシシくんは、道に咲くたんぽぽの使い道を、経験から見つけ出し、商売にすることに成功している。

サッカーを愛するという、モチベーションのなせる技だが、サッカー観戦の体験を商売にできたら、アシシくんは、一生アシシくんのいう、世界一蹴の旅を続けられる。

「ガンジス河でバタフライ」という、たかのてるこさんのバカ面白い本がある。体験を共有させてくれて、本を読んで、作者と同じ旅の経験が出来たような追体験をさせてくれる、おもしろい本だった。

やはり、アシシくんと同じ体験を形にして、生きていく方法を見つけている人はいる。今は、田舎暮らしを始める若者が増えている。都会の喧騒を離れ、窮屈な会社勤めから離れ、信頼できる手応えの中で生活する人が増えている。

近頃は、ハロウィンがあり、毎日のように渋谷の暴徒と化したコスプレの若者がニュースになっている。日本は住みやすく、安全な国だと思っている。財布を落とせば、必ずと言っていいほど、手付かずで戻ってくる。

大都会のスクランブル交差点で、暴れる者、痴漢を働く者、金を盗む者。どれが本当の日本人なのだろう?

どれも本当なのだろう。

だが、集団で甘える流浪の民と、アシシくんのような本物の流浪の民は、まるで違う。生きることに甘えがないからだ。異国での甘えは死を意味する。生きるために、歩く。サッカーのために、歩く。

行き着くところは、日本のワールドカップ優勝なのだ。

日本がワールドカップで優勝することは、至難の業だ。だか、至難の業を克服する人たちが、たくさん出てきている。至難を至難と思わない人たちがたくさん出てきている。日本人は、歩く道を一つだと思いがちだった。

山に登る時も、みんなが登っている場所を探す。

だが、自分の好きなように歩き、登り、泳ぐ人たちがたくさんいることがわかってきた。脳科学者の池谷裕二さんは、数学のテストを解く時に、方程式を自分で作ってから計算するから、時間が足りなくなる。みたいなことを言ってきた。

気がする。

糸井重里さんとの共著「海馬」に書いてあった。

気がする。

そんな不便な人がいることに、快哉を叫んだ。方程式は、覚えるものだと思っていた。問題の前で、方程式を自分で考える。そんな人がいるのだよ。不便に生きる人がたくさんいるのだよ。

そして、便利に生きる人がたくさんいる。どちらも必要だし、大事だと思う。だが、獣道を作る人が、道のない場所を歩く人が、もっとも大切なのだよ。

アシシくんには、もっともっとたくさん歩いて欲しい。たくさん経験して欲しい。

日本のサッカーのために。
日本のサポーターのために。

アシシくんのように、当たり前の道を歩かない、サッカー野郎たちは他にもいる。彼らの背中を見ながら、サポーターはしっかりとした道を安心して歩いて行くのだ。

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