勝村コラム

2018年11月26日(月) 迷走

グランパスは、オリジナル10である。この単語を覚えている人も少なくなったに違いない。元々、Jリーグに参入するしないで迷走した。ビッグクラブなはずだが、なぜか、成績が伸び悩んだ。手を変え品を変え、様々な方法でチームを改革しても、結果がついてこなかった。
1995年に、監督にアーセン・ベンゲルを迎えた。
この決断が、日本のサッカーを、世界のサッカーにも変化をもたらすことになろうとは、神様以外にはわからなかったろう。このフランス人監督は、まさに黒船だった。前年に獲得した、宝の持ち腐れ状態にあった天才ストイコビッチを、輝きをなくした天才ストイコビッチを、見事にダイヤモンドの輝きに復活させ、驚くようなチームに作り変え、リーグ3位、そして見事に天皇杯優勝を飾った。

ソフィストケイトされた、戦術、選手管理、スタッフ管理。
すべてを変えてくれた。それほどのインパクトを残した。何しろ、ジェントルマンでもあった。日本のサッカーを変えて、プレミアムリーグで、マンチェスターユナイテッドの名将、ファーガソン監督と並ぶ名将にまで上り詰め、最高で、最強の面白いリーグを作った大貢献者になった。そして、代わりに監督になったのが、ファーガソンのアシスタントコーチだった、カルロス・ケイロス。
そりゃ期待しますよ。

ポルトガルの素晴らしい能力の若者達をまとめて、ワールドユースで勝利したんですもの。でも、結果は出ませんでした。まさかですよ。これは。まぁ、ケイロス監督の名誉として、その後、マンチェスターUのファーガソン監督の右腕として、活躍します。
が、その後も監督としては、どうも。
今はイランの代表監督としてがんばってはいます。僕らは蔚山で韓国代表とイランの試合を間近で観ましたが、最後にものすごいもめてたなぁ。決して、ケイロス監督が嫌いな訳ではありませんよ。笑っ

この後もゴタゴタは続き、ストイコビッチの孤軍奮闘といいますか、まぁ、もう少し戦力が上がれば、ストイコビッチもまたさらに輝けたのでしょうが、車でも、一番大事な、歯車が、まったくと言っていいほど、噛み合わない。あれだけの名車を作り続けている親会社のチームの、歯車が噛み合わない。もはや、ギャグにもなりません。

さらに迷走を続けて行くが、2008年にストイコビッチが監督に就任すると、なんと、今まで噛み合わなかった歯車が、見事に噛み合って、チームが動き始めた。ここにも、ベンゲル監督の匂いを感じる。そして、ストイコビッチ監督は見事にチームを立て直し、初のリーグ優勝をも果たした。そして2013年に契約満了まで務め、内容はいろいろ言われはしたが、名監督の一人になった。

ストイコビッチ監督が任期を終えると、やはり迷走が始まる。最強のガンバを作り、後にロシアワールドカップで代表を率いて大会を盛り上げた、西野監督を迎えたり、いろいろ努力するも、結果には繋がらない。

そして、満を持して、チームのレジェンド、ボレーの虎と言われた、笑っ、小倉隆史さんが、満を持して就任するも、まさかのゴタゴタがあり、まさかのゴタゴタ収まらず、まさかのチーム史上初のJ2降格が決まる。

もはや、グランパスには灯りが見えなかった。歯車は噛み合わないどころか、停止状態に陥った。食物連鎖の頂点と言われる、キャラクターにも使われているシャチは、狩りすら忘れた弱々しい小さなシャチもどきに変わり果てた。だが、川崎フロンターレで見事な采配を振るっていた、風間八宏監督が、なんとなんと、J2に落ちたグランパスの監督に就任した。

すると、油が切れ、錆びて二度と円滑に動くことがないと思われていた、グランパスの歯車が、少しずつ動き始め、回転数を上げ、ゴタゴタしてはいたが、一年でJ1に返り咲いたのだ。弱々しい生き物に変わっていた、シャチもどきが、食物連鎖の頂点に返り咲いたのだ。そして風間グランパスは、魅力溢れるサッカーを展開して、頂点まで上り詰めるかと思われた。



現在は、まさかのチーム状態。J2に降格もあり得るチーム状況。な、はずなのだが。観客動員は伸び、2013年にアーセナルとの親善試合のスタジアムレコードを更新する可能性もあるのだ。J2に降格したことが、サポーターの琴線にふれた。それもいい方に。笑うしかないのだが、降格が、チームとサポーターの絆をより強くしてしまった。

悲劇が喜劇に転じる、シェイクスピアの優れた作品のようだ。もちろん、そこには奇跡だけが存在した訳ではない。チームの中だけではなく、クラブの中にも、食物連鎖の頂点に立つシャチのような男がいたのだ。名古屋グランパスエイト代表取締役社長、小西工己さん。

小西さんは戦う選手と同じように、日々戦い、スタッフにも、牙を持たせた。会社員には一番難しい「牙」そして「自由」。最近はずいぶん変わってきたが、会社員は、なるべく無茶をしないし、無茶をさせない。責任が個人を潰すからだ。だが、その責任を、なんと小西社長が背負ってくれるのだ。

失敗しても、次に活かせることができれば、それは失敗ではない。簡単なことのようだが、会社員には、とても難しいことだ。それを小西社長は実践させた。選手と同じように。風間監督が選手に要求するのと同じことを、小西社長は社員に要求する。

まず、小西社長に感じたことは、熱量。

身体の中に、マグマがグツグツしているようだった。人の話を、こぼさず聞いて、頭を常にフル回転させている。スタジオで人が話している時の、小西社長の目線の動きと強さ、そして熟考している頭の中の動きと強さ。フル回転している頭の回転音が、聴こえてくるようだった。

この人が近くにいてくれたら、すごく安心できる気がした。こんな人はなかなかいない。風間グランパスと、小西グランパス。両方とも正しい回転をしているが、まだ少し噛み合わない。この大きな二つの歯車が噛み合い、勝利という方向に回転を始めたら、迷走が得意だったグランパスは、優勝へ向かって爆走を始めるだろう。

そんな食物連鎖の頂点に立つチームを、当分誰にも止めることはできないだろう。
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