勝村コラム

2020年4月26日(日) しあわせな地獄【後編】

シェフィールドは、おりが一番最初にイングランドのサッカーを生で観た場所なのだ。

ウルルン滞在記で、この街に来た。その時の家族と仲間と、地元のシェフィールド・ウェンズデーとブラッドフォードのカーリングカップを観たのだ。

この試合のことも、一生忘れないディズニーランドに入る時のように、一人一人チェックされる。衝撃だった。

小さなスタジアムだったが、応援の声や、念みたいなものが渦巻いていて、客席に行く階段を上がる時に、なんだか空気が重くて上がりづらかったそれほど、サポーターの声援がすごかった。忘れられない、貴重な体験をした思い出深いスタジアムと街。

20年ぶりに降り立つ。

今は、プレミアリーグの1部に、シェフィールド・ユナイテッドがいる。有名な選手がいないのに、素晴らしいサッカーを展開して、上位に食い込んで、リーグを盛り上げている。シェフィールドに来たのは、世界で最古のクラブチーム、シェフィールドFCの取材である。

マンチェスターからけっこう走った。景色が変わらない。みんな疲れている。でも、みんなしあわせそうなのだ。車もいつのまにか小型になっている。笑

しかも、後部座席が、向かい合っている。ありえない。普通のバンだよ。笑

おのぼりさんの男達が、6人膝がくっついちゃってんのよ。まったく動けない。伸びもできない。笑

こんな苦しい移動は初めて。だけど、みんなしあわせそうなのだ。みんなサッカーが大好きなのだ。向かい合って座っているおかげで、顔を合わせて会話できる。いいのか、悪いのか。笑

よしゃいいのに、自分飯塚が、ディレクターの流石ちゃんに、結婚してるの?

なんて質問を突然言い出した。あ、は、はい。してました。でも、ウクライナ人の妻と、、子供の教育のことで揉めて、、、。もういい!ウクライナの妻は気が強くて、、、。もういい!!話しが深く暗くなりそうなので、やめてもらった。笑

こんな会話をしながら、(どんな会話?笑)みんな親睦を深めている。シェフィールドの中心街に着いた。大きな時計台のある、市役所の前。まったく覚えていない。ここに来たことも覚えていない。

20年の記憶はまったくなくなっている。20年前に滞在した家庭は、奥さんと別れていて、娘さん二人と住んでいる、おりと同じ年の父親と三人暮らしの家だった。長女は確か16歳で、次女は12歳。

父親は仕事終わって夜になると、彼女の家に行ってしまうから、その娘たち二人と、30才くらいのおりの三人。いいのか!そんなんで!笑

仕方ないから二人に温かい食事を作り、掃除をして、寝るときは三人ベットで、日本の単行本を読んで聴かせてあげた。まるでお母さん。笑

2週間くらいの滞在だったが、英語ができるうちの奥さんと、長女のリサは、今でも時々メールのやり取りをしていたので、なんとなくつながってはいた。

んで、今回、20年ぶりにシェフィールドに行くので、翻訳アプリを取得して、リサとLINEのやり取りをしていたのだ!ありがとう翻訳アプリ!あなたは素晴らしい!

シェフィールドFCは、現在8部のチーム。

みんなそれほど盛り上がらず、時間もかからないと思っていたし、街からも遠くないと思っていた。それがあなた!すごかった。本当は、夕方から、そのシェフィールドFCのグラウンドで、女子サッカーの試合が開催されるはずだった。まぁ軽く試合観て帰りましょうみたいなノリだった。

だが、前日からの雨で、早々と試合中止の決定が決まっていた。水はけが悪く、試合のできる状態ではないらしい。おのぼりさん軍団たちも、なんとかもうひと試合観たいと密かに思っている。

実はオールドトラフォードで、ELが開催されるのはわかっていたが、スケジュール的に無理だし、チケットも取れないとコーディネーターに言われていた。

とにかく、シェフィールドFCに行くことになった。これが、また中心街から遠い!

雪山の中を車は走り始めた、おいおい、タイヤとか大丈夫なのか?みんなで相談して、危ないから寝るのはやめようと決めた。2分後くらいに全員寝た。笑

なんとか到着した。想像とはまったく違っていた。いくら最古のクラブチームとはいえ、8部のチームである。日本なら、サッカー好きの下手くそな仲間が集まってチームを作り、どこかの空いているグラウンドに行って試合してご飯食べて帰る。

みたいなのが当たり前である。それがあなた、スタジアムがあるのよ!コンテナだけど、クラブハウスもあるのよ!もう〜、信じられない!

アンビリーバボ!

芝生のピッチがあり、客席まであり、グッズまで売っている。あっちょんぶりけ。

驚愕!

内容はオンエアで確認していただきたい。最古のルールブックもあり、競売にかけたら、なんと、1億4千万円ですって!さすが、サッカーの母国。これにはひっくり返っても勝てません。リスペクト以外ない。

すべてを知り尽くしたサポーターにいろいろ説明していただき、グッズを買った。こんなに貴重なものなのに、なんでもないし、普通にそこにある。リスペクト以外ない。

そんなこんなで、疲れているはずのドミやんが、マンチェスターUサポーターのドミやんから、オールドトラフォードのELの試合の、チケットの取れたと連絡が入った。

現場が揺れた。なんちゅうえらい仕事してくれてんねん!よくやった!ドミやん!試合の開始時間は、8時。今6時過ぎ。これから20年ぶりに、長女のリサに再会するのだ。

なんて盛りだくさん。しかも完全に公私混同。

だが、スタッフもフィリップの家とか、ストレートウイスキーとか、笑、展開が凄すぎて、これも元々台本にあったかのようにテンポよくサポートしてくれている。そして、撮影もしましょうって。笑

ここのナレーションは、下條アトムさんにお願いして、なんて冗談も言ってる。笑

リサに連絡すると、大きな時計台のある市役所の近くのマックにいるという。やっと市役所に着いた。すでに暗くなっている。着いたと、リサに連絡した。みんなでマックにむかった。

またマックが思ったよりも遠くて見つからない。笑。参った参った。やっとみんなでマックに到着してリサを探した。みんなにはリサの顔写真を見せていた。お尋ね者か!

マックに日本のおっさんがたくさん入っていく。カメラは外で待ち構えている。感動の再会を収めようと、若いジャムおじさんこと、湯原にも力が入る。マックから店員さんが、勝手に写しちゃダメだよ!的なことを言ってる。

ジャムおじさん湯原は、回してないよぉ〜と、なぜか長州力のキレてないよぉ〜みたいな感じで反論している。テンションあがって、今にもあんぱんを焼きそうな勢いである。

しかし、中を探してもリサがいない。

連絡してみると、時計台の前にいるよ。マサはどこにいるのだって。笑

全員で倒れた。一本道である。いつすれ違ったんだよ!笑

おりたちは、マックの場所を何人にも聞きながら移動していたので、見過ごしてしまったらしい。そして、やっと20年ぶりに再会。20年の歳月を感じることはなかった。

自分の娘のような、不思議な存在の女性がそこにいる。ウルルンの司会だった、徳光さんにも見せてあげたい。

ちなみに、イギリスに行くちょっと前に、徳光さんが、おりも出ているドラマに特別出演してくださった。徳光さんとも久しぶりに再会していたのだ!

徳光さんは、ドラマには基本的に出ない。これも、不思議な強い縁を感じる。神様はいる。リサは、当時と変わらず、涙もろかった。再会に、たくさんの涙を流してくれている。

おりも胸が熱くなった。

何故かおのぼりさん軍団で、サッカー番組の撮影スタッフが、ウルルン滞在記その後みたいな顔で撮影している。そして、優しいジムさんが、すごい一生懸命通訳してくれている。全然関係ない仕事なのに。笑

なんというチームワーク!ジムさんありがとう。おのぼり軍団ありがとう。ひとしきり話した。リサも二人の子供のお母さんである。

ここから電車で数十分の距離の場所にすんでいるらしい。子供たちには、説明してくれているが、長くはいられない。僕らもマンチェスターまで戻らなければならない。

短い再会だったが、これもしあわせな再会だった。また会いましょうと誓った。

そして、またまた自分飯塚が、勝村さん、リサから離れてください。ウルルンのお別れみたいに撮りますからと、いい雰囲気に水をさす。おりがリサから離れると、当然リサも駅に向かう。

自分飯塚は、ウルルンみたいにリサが残って、手を振る姿を撮ろうとしたが、リサが動き出したので、慌ててリサを追った。

最後のお別れに、僕らがリサに手を振ったら、リサの横にいる自分飯塚に手を振ったみたいになって、みんな嫌な気持ちになった。

ばかやろ!飯塚!

だけど、みんなありがとう。つきあってくれて。さぁ、いよいよオールドトラフォード。

相手はベルギーのクラブ・ブルージュ。

試合開始には間に合わない。

何時くらいに着けるのかは、道路状況次第である。だが、道路状況はすこぶる良好で、かなり早く着けた。チケットをフットワーク園畑が準備して待っていてくれた。ありがとう園。突然スタジアムから歓声が聞こえた!

ゴールだ!

興奮は最高潮!全員でオールドトラフォードに向かって走る走る。笑

雨も降っていたが、誰も気にしない。オールドトラフォードに到着した。

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伝説のトリデンテの像。伝説のトリデンテの像の前で、みんなで写真を撮った。

最上階まで階段を走って登る。キツイキツイ。乳酸が溜まるのがわかる。観客席に到着した。最上階から下のピッチを観る。屋根が低い。自分飯塚は、以前フットブレインのロケでここを取材している。

屋根が低いですね。屋根が動くんでしょうと、適当なことを言い出している。みんなスルーした。

全員で座った。すでにユナイテッドが2点入れていた。サポーターがうれしそうに歌っている。サポーターがうれしそう叫んでいる。スタジアムは真っ赤だ。相手は一人退場している。座ってすぐに点が入った!

おのぼり軍団、サポーターたちと一緒に立ち上がった。ブルージュのゴールキーパーは、リヴァプールでも活躍したミニョレ。ユナイテッドのサポーターは、元リヴァプールのミニョレに厳しい。笑

ブーイングの嵐。

少しでも時間使うとみんな怒る。笑

ゴールキックで滑って転んだ時には、サポーター全員で、ざまみろ!みたいな叫び声をあげ笑う。そんな中にいられるしあわせ。ハーフタイムになっても誰も動かない。しあわせなのだ。

後から考えれば、なんか食べ物とか並んで買えば記念になったかなとも思ったが、観客席で雰囲気を味わっていたかった。後半が始まった。ユナイテッドサポーターは、ご機嫌さんである。

試合内容でも、相手を圧倒している。後半さらに2点を加え、なんと5-0でも勝利。ファーガソン監督退任後、ユナイテッドは迷走している。

チーム状態は最悪である。

ELで試合をするようなクラブではない。イングランドを代表するビッククラブだ。チャンピオンズリーグで、常に上位にいなければならないチームだ。

長期政権の終焉が招いた悲劇。

シェイクスピアの戯曲のような展開。シェイクスピアの史劇は、終わりで始まって、始まりで終わる。終焉した新生ユナイテッドが始まるのは、いつなのだろう。そう遠くないうちに、今の状態などなかったかのような、復活を遂げることでしょう。

そしてこのビッククラブの優勝に、日本のスターがいたことも忘れてはならない。日本代表の香川真司くんは、このチームの優勝メンバーの一人である。これもユナイテッドの歴史に刻まれている。

全員ご機嫌さんで、オールドトラフォードを後にした。全員ご機嫌さんの中で、さらにご機嫌さんがいた。ドミやんである。マンチェスターUのサポーターで、誰よりも興奮している。やはり5-0。

ホームで5点入ったのが嬉しくてしょうがないらしい。最近のチーム状態を、サポーターはみんな憂いている。だが、この5点で、サポーターはかなりのガス抜きができたようだ。笑

おのぼりさんたちも、この予定になかった嬉しいイベントに大興奮。しあわせは最高潮に達している。

そして、なんと!これからリヴァプールに向かうのだ!

なんだ?このスケジュール。笑。

大型トラックの運転手さん並の移動である。菅原文太さん並の走行距離である。伝説の名優菅原文太さんの代表作の一つ。

「トラック野郎」

一番星〜み〜つけた〜

すみません。昭和で。夜中にリヴァプールに到着。何食べようか?みんな元気。全員疲れてるはずでしょ?みなさんも、この長いコラム読んでて、イカれてると思うでしょ?笑

しあわせがエネルギーになっているので、誰も文句言わない。力はみなぎる一方である。最後の夜は中華になった。リヴァプールの中華。とりあえず、全員青島ビール。笑

おりはせっかくだから、紹興酒を頼んだ。店の人がざわついた。紹興酒を誰もわからない。笑

嘘でしょ?

店で一人、ワインに飲んでいたおじいさんがいた。そのおじいさんが素早く動き始めた。これだ。中国の酒。と、おじいさんが不思議な瓶を持ってきた。これしかない。匂いを嗅いでみた。生命の危険を感じた。笑

いらないと言うとその方がいいと答えた。こらこら。笑

どうやら、この店のオーナーらしい。笑

料理もいろいろ頼んで、楽しみに待つ。あっと言うまに料理が出てきた。坦々麺をまず食べた。今まで経験したことのない坦々麺だった。だが、不味くはないっていうか、美味い。笑

麻婆豆腐を食べてみた。今まで経験したことのない麻婆豆腐だった。だが、不味くはないっていうか、美味くもない。笑

不思議な中華だったが、全体的にはとても美味しかった。こーしてリヴァプールの夜は終わった。今までで一番いい快適なホテルだったのに、滞在は5、6時間で、ただ寝てるだけ。泣

朝5時に起きて、おのぼり軍団に連絡した。

みんなダラダラしていて、15分後に集まり、最後の散歩に出かけた。ドミンゴ佐藤、昭和アニメ顔柿澤、自分飯塚、板尾勝村。フルメンバーである。

下調べがしっかりしている、自分飯塚が、ビートルズが歌っていたライブハウスを見に行きましょうと言った。さすがである。仕事がら、日本でいろいろイメージロケハンをしている。任せることにした。

THE CAVERN CLUBというライブハウスらしい。

観光地になっているので、すぐに見つかった。勝村さん、写真撮りましょう。と、店の目の前で撮ってくれた。

ここかぁ〜。

ビートルズがLiveやってた場所は、、、感慨深い。また少し歩くと、勝村さん間違ってました。こっちでした。と、違う場所に案内した。

思い出した。南フランス行った時も、勝村さん、世界最古の映画館を見に行きましょうって言われて、喜んで行った。ここですって写真撮って、中も見せていただいた。中の女性が不思議な顔をしていたのが気になったが、なんか、すごく嬉しかった。

歴史的な場所にいる感覚。かけがえのない瞬間である。少し歩くと、自分飯塚が、勝村さん場所間違えてました。さっきのとこじゃなかったみたいですって。

ばかやろ!

喜び返せ!

次に本当のとこ行っても、もう新鮮に喜べないじゃねぇか!

度し難いよ!まったく!

今回も、本物見ても新鮮に喜べなかった。すごく綺麗な観光の街だった。昔のリヴァプールも観てみたかった。それは叶うことはないが、昔を感じながらホテルに戻った。雨の中の散歩だったが、楽しかった。楽しかったばかり書いているが、それで十分だ。

おのぼり軍団の心に、それぞれ、違う形で刻まれている。現地で経験することが、本当に大事である。

さぁ、いよいよクライマックス。

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すべてがクライマックスだったが、日程的にクライマックス。しかも、現在最強のチーム、30年ぶりのリーグ優勝間違いない、リヴァプール。リヴァプールは、レッドソックスと同じオーナーである。レッドソックスで働き、リヴァプールとパートナーシップ営業責任の吉村さんが、いろいろ動いてくださった。

ワールドワイド。

リヴァプールの職員の方が案内してくださった。まず、外階段を上がった。寒い。情け容赦なく寒い。笑

階段長い。

説明してくれている方も寒そうだ。笑

やっと建物の中に入れた。ホッとした。写真見て歴史的なことを説明してくれている。正直、大したことはない。マンチェスターシティの演出に比べたら、なんのサービスもないし、寒いし。赤い水玉の透明なガラスの向こうに、マージー川が流れている。その奥に、川を隔てたリヴァプールの永遠のライバル、エバートンのグディソンパークが見える。

ドンっと、心臓が高鳴った。

これが、この距離か!

世界で最も有名なダービーの一つ、マージーサイドダービー。説明の方も少し熱が入る。そして、リヴァプールのドレッシングルームへ。ここで、you'll never walk aloneが流れる。

選手たちも、ここでサポーターの合唱を聴くのかと思ったら鳥肌が立った。サポーターの力が選手をピッチに誘うのだ。おりたちが観ることが出来なかった、ウエストハム戦。

観戦したスタッフは、サポーターが勝たせた試合でした。ものすごいサポーターの迫力でしたと、口をそろえて興奮して喋っていた。ここにいると、力が漲ってくるのを感じる。歴代のスター、戦うスーパースターたちが、ここからピッチに向かって行った。

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そこにフットブレインがいるのだ。

おのぼり軍団もピッチに向かった。皮膚が痛いくらいの気を感じる。このスタジアムツアーに余計な演出はなかった。

何故か?

いらないのだ。歴史がサービスを必要としないのだ。そこにあるだけでいいのだ。アンフィールドは、継ぎ足し継ぎ足しでスタジアムを作っている。どんなにスタジアムが古くなっても、この場所を離れることはないのだろう。

近年、古くなったスタジアムを離れて、新しく、大きなスタジアムに移っていくチームは多い。もちろん、悪いことではない。だが、スタジアムを引っ越したことで、魂を置いてきてしまったと嘆くサポーターも多い。だが、このアンフィールドにそれは当てはまらない。

このスタジアムがリヴァプールなのだ。

最後に訪れた場所として、最高だったのかもしれない。今回の旅は、もしかしたら何の参考にもならないのかもしれない。

それは、映像で観ても、伝わるのは1/10以下かもしれないからだ。やはり、現地にいないと伝わらない。そして、サッカーを文化にとみんなが思っているが、イギリスではサッカーは文化ではないということがわかった。

サッカーは日常なのだ。

サッカーは生活なのだ。

文化でもいい。

だが、そんなに遠くない。手を伸ばさなくてもそこにある。常に横にある。どんな時も一緒に。一人ではない。それが、サッカーだった。意識しているうちは、ワールドカップでは勝てないのかもしれない。

いつもそこにいる。

サッカーはいつもそこにいる。

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