勝村コラム
2020年4月26日(日) しあわせな地獄【前編】
フットブレインも、とうとう10年目に突入しました。
なんという奇跡。この回転が速い、生馬の目を抜くテレビ業界で、こんなマニアックな番組が9年も続くとは、誰が想像できたでしょうか?
番組に出演してくださった、すべての素晴らしいブレインの皆様に多大なる感謝です。日本のサッカー界を背負って戦ってきた、偉大なるアナリストの皆様に多大なる感謝です。手弁当のような厳しい状況で、持っている力の限りを尽くして番組を作ってくれている、全てのスタッフに感謝です。
そして、初代アシスタントの杉崎美香さん、2代目の皆藤愛子さん、3代目の鷲見玲奈さん・片渕茜さん。皆様の進行のおかげで、たくさんたくさん助けていただき、なんとか番組が成立してきました。感謝です。
本当に本当にありがとうございました。
そしてなんと言っても、この番組のジャイアンと言われた傲慢な独裁者、勝村様が炎上することなく、MCを続けてこられたのも、数々を暴言のすべてを、見事に編集でカットしてくださった編集マンのファインプレーでしょう。
そしてそして、一番は、この番組を愛し、励まし、応援してくださった、テレビの前のフットブレインのサポーターの皆様のおかげでございます。
最後に、僕らがサッカーを大好きになったダイヤモンドサッカーを作ってくださったスタッフ、亡くなられた岡野俊一郎さん、アナウンサーのレジェンド、金子勝彦さんに感謝です。
そこで、次の10年に向けて(そんなにやるつもりか!)サッカーの母国イングランドに、日本がワールドカップで優勝するためのヒントを探しに、遠征という名の観光旅行(こらこら)に、いや、え〜と、なんていうんだっけ?冒険旅行?取材か。
そんな感じの旅行(ちゃんとした仕事だ!)に2月下旬、行って参りました。
メンバー発表。
先発隊は、この番組を立ち上げたスーパーヒーローであり時差ぼけ王、飛ちゃん。飛はあのリヴァプール戦に爆睡するわ、どこに行ってもこっそり寝ているとんでもないやつなのだ。その遺伝子を受け継いだ後継者、昭和のアニメ顔柿ちゃん、ディレクターの謎の多い憂い顔の流石ちゃん。カメラマンは、若いジャムおじさん湯原ちゃん、そしてこのロケの全体の仕切り役、童顔の仕事師、フットワーク軽い園畑ちゃん。コーディネーターは、三回の結婚経験があり、今も若い奥さんと一緒いるという74才、元気な紳士、ジムさん。
後発隊は、プロデューサー、妙に声が通るドミンゴ佐藤。海外遠征ではほとんど一緒に朝散歩してきた、この番組のご意見番、自分大好き、自分自分飯塚。
さらに別班で、リヴァプール遠征していた、番組立ち上げからのレジェンドであり貴公子、カコさん。
久しぶりにコラム書き始めた頃、初代アシスタントの杉崎さんから連絡があり、旦那さんの映画が完成したのでよかったら観てやってくださいと連絡が来た。
不思議な縁である。
映画は「ムヒカ 世界で一番貧しい大統領から日本人へ」という、ウルグアイの元大統領に、杉崎さんの旦那さんが密着したドキュメンタリー映画だ。予告だけでも素晴らしかった。
縁を感じつつ、話を戻しましょう。
2月、おりはドラマの撮影後、23時頃帰宅して荷物を持って羽田空港へ。
26時45分発の深夜便。深夜便。なんて色っぽく、艶っぽい響き。
ジャイアン爺さん、気が急いて気が急いて、早めに空港に向かった。深夜便だし、何かあった場合に、対応できるようにしたかったからだ。空港に着くと誰もいない。すぐにドミンゴ佐藤に連絡すると、「あ〜すみません。今電車で向かっております。今どちらですか?急ぎますのでよろしくお願いします」
電車で急げるのか!と、高速でLINEぶっ込んでやろうかと思ったが、好感度好感度と何度も呟いた。これもブレインから教えていただいたアンガーコントロールのおかげである。そして丁寧に「モーマンタイ。気にせずゆっくり来てください」と心にもない文章を打って返した。
15分くらい待ってドミンゴ佐藤が到着した。手続きを済ませると、自分飯塚も到着した。ドミンゴ佐藤が、「寿司でも食べますか?」と、ハリのあるバリトンで言う。
このハリのある声を聞くと、すべて言うことを聞くしかないような気になる。おりも飯塚も素直に頷くしかない。すぐに眠れるように、酒ガンガン飲んじゃおってことになって、ごりごり飲んで寿司もバクバク食べた。
この寿司がうまいのなんの。ドミンゴ様ごめんなさい。やっぱ寿司だったね。日本人は節目節目は寿司だね。大満足して、酔っ払って、入国検査を受けた。
いろいろ脱がされて、靴まで脱がされて、少しイラッとしたけど、寿司のうまさが身体に充満しているし、気持ちよく酔っているから、3人ともご機嫌さんである。何より、サイコーのイギリス取材旅行が待っている。何事もなく通過して、それぞれ買い物などをした。
今回は日本の航空会社で行く英国の旅。
自分飯塚は、「初めてですね。この番組で日本の航空会社で行くのは。僕」みたいなこと言ってテンションMAXである。飛行機に乗り込む。なんだろう。この日本人の乗務員さんしかいない、この日本人的安心感。何のために、子供の頃からあれほど英語を勉強してきたのに、英語が話せないのか?
それは、この安心感を得るためなのだ。普段はアルコールを飲まないおりだが、眠るために、飲み物はすべてアルコールにした。
まだ観ていなかった、タランティーノのワンスアポンアタイム・イン・ハリウッドを観ることにした。アルコール作戦が功を奏して、いつのまにか落ちていた。ご飯の時間も爆睡してしまった。8時間近く寝たらしい。
こんなに眠れるとは。残りの時間で、タランティーノの映画をちゃんと観た。すると乗組員さんが、「勝村様、お食事はいかがされますか?」と聞きにきてくれたので、ご機嫌さんは、「ご飯は食べられないのでラーメンをお願いします」と、訳わからないことを言って笑っている。
気持ち悪かったろうなぁ。笑
寝る前にメニューを見た時にトンコツラーメンが美味しそうだった記憶が残っていたのだろう。トンコツラーメンが運ばれてきた。お腹が空いてんだか空いてないんだか、よくわからなかったが、とりあえず食べた。
う、うまい。うますぎる。
なんだろ?普段はラーメンも食べないのに、海外に行く時には、寿司だの、ラーメンだのが、妙に欲しくなる。そして、無事ヒースロー空港に到着。
日本の航空会社なので、ロストバゲージの心配もない。最後の自動ドアが開くと、目の前に「勝村様」と書いた画用紙を持った男性が立っていた。迷子じゃないんだから。笑。
フットブレイン様でいいだろがと思いながら挨拶した。コーディネーターのドミンゴさん。明るくテンションが高い。この得難いキャラクターのイギリス人が、いろいろ楽しい経験をさせてくれた。
ロンドンまでは、めちゃくちゃ渋滞しているので、電車移動の方がいいですよ、ということで、地下鉄に乗った。
あっという間に目的の駅に着いた。相変わらずヨーロッパの駅は可愛らしい。日本の大きな駅はビルの中にあり、電車は外から見ることができない。だが、ヨーロッパの大きな駅はだいたい大きなドームでできていて、すべての発着場所が同じなのである。しかも道路と同じ位置にあるから、階段を上がる必要がない。セントラルステーションと言う映画があるから、イメージできない人は、そんな映画を観るのもいいかもしれない。
駅を出て、タクシーを止めた。
おりたちの乗ろうとしたタクシーの運転手を見て仰天した。ものすごいおばあちゃんなのだ。笑。
しかも絵に描いたような、ヨーロッパのおばあちゃん。カントリーマアムのおばあちゃん。笑
大丈夫なのか?歩くのも大変そうなおばあちゃんである。超後期高齢者。免許証を返納しなければダメなおばあちゃんだよ。笑
不安を抱えたままタクシーは走り出した。景色など観る余裕はない。みんなおばあちゃんだけを見ている。笑
大丈夫なのか?大丈夫なのか?
全員の心の声が聞こえて来る。おばあちゃんの運転するタクシーは、安全運転で、見事に市内のホテルに着いた。見事にってのもおかしな表現だね。全員が安堵した。飛行機よりも緊張するなんてことはなかなかない。荷物を部屋に置いてすぐにホテル近辺を歩いた。別班と合流するまで4時間以上ある。
まだ朝早いので、店はほとんどやっていない。別班のスタッフは、リヴァプールから移動してこちらに向かってくるが、合流は昼過ぎになる。
この別班のスタッフは、リヴァプールのロケハンの後、プレミアリーグの、リヴァプールVSウエストハム戦を観戦している。おりは撮影があったので、観戦することは叶わなかった。
考えてみたら、前回ブラジルに行った時も雪で飛行機が飛ばず、1日遅れたために、コリンチャンスVSパルメイラス戦を見逃した。
プレミアリーグの結果は3-2。なんちゅうすごい試合だ。結果を知って泣きそうになった。しかも現在最強の、クロップ監督率いるリヴァプール。観たかったああ観たかった観たかった
忘れよう。
ホテルに戻り朝食をみんなで食べながら、打ち合わせをする。この後どうする?
けっこう時間ありますからね。すると自分飯塚が、バンクシー見に行きましょう。僕、日本で調べてきたんですよ。と自慢げに話し始めた。必ず僕が先にくる。ドミンゴ佐藤もジャイアン勝村もそれほど乗り気ではない。他にいろいろあるだろ?と思いながら、他を探したが、朝早いからどこもやっていない。
仕方なく、バンクシー探しに出かけた。道路はどこも混んでいたり、通行止めが多く、思うように車が走れない。裏道をドミやんが駆使してくれるが、とにかく通行止めが多い。走りながらドミやんが、あ、ここがビビアン・ウエストウッドですよ。と、突然説明してくれた。
ビビアン・ウエストウッドは、言わずとしてた、セックスピストルズの衣装をデザインした、パンク界のカリスマである。行こ行こ。せっかくだから。突然の買い物。店のシンボルの大きな時計。針は逆回りをし続けている。
店はクローズになっていた。まだ早すぎたのだ。しかし、中にはパンキーな女性の店員さんが3人見えている。おりたちおのぼりさんを見つけると、鍵を開け、開店時間よりも少し早かったが、店を開けてくれた。
しかも一人は日本人の女性だった。
おのぼりさんは、口をあんぐりと開けて、パンクの老舗を見学する。みんなそれほどパンクには興味なさそーだった。おりはど真ん中で、年老いたジョンライドンが川崎チッタでライブをやった時も観に行っている。
二人とはときめきが違うが、年齢的に商品にはそれほどときめかなかった。残念ながら。すると自分飯塚が、パンキーな帽子を手に取った瞬間に、これくださいと、瞬殺で買い物した。かわいい帽子たが、1万以上する高額商品である。
ドミンゴ佐藤とジャイアン勝村は少しびびった。
友達の女性の誕生日プレゼントにしようと思って。友達の女性?1万以上の帽子を迷いもせず、、、?
なんか怪しいとおりたちは思ったが、それほど興味がないので、何も質問しなかった。そしてお金を払っている間に、自分飯塚がやさしい店員さんたちと何やら話している。
するとその日本人の女性店員さんが、ああ、だからこちらの方見たことがある気がしていました。と、ジャイアン勝村を確認して言ってくれた。やはり、うれしいものである。顔が知られていると言うことは。しかも英国でそんなことを言われる。
芸能人ってやつはね。やっぱね。笑
ええ〜と、お名前は、、え〜、い、いた、あ、いた、、、。すぐにおりは自分から、そうです。板尾です。吉本の。と言うと、その女性も、ああ、板尾さんですね。どうりで見たことがあると思いました。お仕事がんばってください。
おりも、ありがとうございます。と言って店を出た。
板尾創路くんとは、同い年で、昔から似ていると言われていた。昔ロケで高野山に行った時も、おばちゃんが近寄ってきて、あ〜、板尾さんやろ?と関西弁で話しかけてきた。
は?
板尾さんやろ?
めんどくさいので、ああ、そうです。と答えたら、そのおばちゃんが、みんな〜みんな〜、板尾さんやで〜と叫ぶと、周りにいたおばちゃんたち十数人が集まり、板尾さん、板尾さんの大合唱になり、あんた普段は大阪弁使わんのやな。とか、あんたのおばちゃん知っとるで〜とか、すごいことになったことがある。
話しを戻そう。
この時、恥をかいたジャイアン勝村は、ドミンゴ佐藤と自分飯塚が、ザマァミロ的な笑顔をしていたのを、見逃さなかった。必ず仕返ししてやると心に誓った。
そして、車に戻り出発した。数分走ると何でもない場所で車は止まった。
自分飯塚が、こっちの方ですねと、携帯見ながら歩いて行く。さらに狭く、何でもない場所の壁の上の方に、突然バンクシーは現れた。テレビで見たことのある壁画だった。
女性がスーパーの買い物するカートごと転落している絵である。なんか、突然現れたバンクシーに心を奪われてしまった。な、なんかすごいなバンクシー、、、
そして、写真を撮りまくるおのぼりさんたち。ドミやんまで参加して写真撮りまくってる。
そして少し下がって写真撮ろうとしたら、いきなりこの世のものとは思えない、ドデカいう○こさんが鎮座していた。
みんな大声をあげて叫んでしまった。なんだ?この大きさは?動物のか?人間のか?
いや、人間でこのサイズはあり得ない。尻の穴が裂けてしまうぞ!
などと大興奮。自分飯塚は、なんとバンクシーそっちのけで、写真撮り始めた。ばかやろ!なに、う○こさんの写真なんか撮ってんだ!
いや、あまりにすごいんで。気持ち悪いことすんな。これあとでSNSにあげようと思います。おまい、狂ってんのか!捕まるぞ。
いや、モザイクかけて載せますんで。もはや、バンクシーはどうでもよくなっている。もはや、巨大う○こさんの後ろにあったバンクシーくらいの印象しかない。少し前ならXファイルに収まっているくらいのう○こさん。
興奮冷めやらず、次のバンクシーに行くことになった。車の中でも、次のバンクシーの場所にも、う○こさんがあればいいですね。などと自分飯塚は興奮している。
バンクシーはどうなったんだ!
次も場所も不思議な所だった。イギリス特有の円形の交差点の中にあるのだ。その円形の交差点は巨大で、びっくりするほど大きな馬の頭の像がある。頭だけの巨大な馬はものすごいインパクトである。
すぐにバンクシーも見つかった。今度は、「小さな植木と抗議する少女」の壁画。エネルギーがすごい。しかしおのぼりさんたちは、どうしても周りにう○こさんがないか、探してしまっている。笑
もはや、何のためにバンクシー巡りをしているのかわからなくなっている。時間もなくなったので、ホテルに戻ることになった。しかし、このバンクシーツアーは、自分飯塚のファインプレーと言わざるを得ない。
素晴らしいぞ。自分飯塚。まもなくリバプールの別班と合流。軽い打ち合わせをして、最もロンドンらしい、ビッグベンが美しく見える、テムズ川の川岸に向かった。
8年前の取材の時も、この場所で撮影した。おりは91年に開催された。ジャパニーズフェスティバルで、ロンドン公演に出演して以来、蜷川幸雄さんの公演でも、何度もロンドンを訪れている。
このナショナルシアターにも近い場所は、必ず来て、なんとなく言葉を交わすのだ。公演成功しますように。とかね。個人的にも思い入れの強い場所なのだ。そして、国会議事堂が見えてきた、懐かしさに胸が熱くなる。
だが、何か変なのだ。よく見ると、ビッグベンがない。うそでしょ?
そうビッグベンがないのだ。よく見ると工事中で、黒い作業の幕で覆われて、尖った屋根しか見えない。オーマイガッ!なんて幸先の良いスタートなんだ。
ビッグベンをスルーして、タワーブリッジへ。フットワーク園畑はここをロンドンブリッジと勘違いする人が多いんですよ。と、ツアーガイドみたいなこと言い始めてロンドンブリッジの歌まで歌い始めた。
全員がおのぼりさんである。
オープニングの撮影を終えて、これまた8年前にも行ったアビーロードへ。前回は杉崎さんも一緒だった。車の中でそんな話で盛り上がっていたら、ぽつりぽつりと雨が降り始めた。おいおい、どうすんだ。フットワーク園畑は、判断も早い。中止にして、明日の撮影にしましょう。
このままスタンフォードブリッジに向かいます。そう。本日の超目玉。超目玉だらけのロケだが、最初の超目玉。ロンドンのビッククラブの一つ、チェルシーのホームスタジアム見学と、チャンピオンズリーグのチェルシーVSバイエルンミュンヘン戦の激闘の観戦である。
ご存知の方もいると思うが、8年前のロンドンロケの期間に、偶然だったが、チャンピオンズリーグの決勝の日と重なった。
これまた偶然にもロンドンのチェルシーが決勝に進み、これまた偶然だが、バイエルンミュンヘンとの同じカードだったのだ。
これにもすごい縁を感じた。
この時は前評判を覆し、チェルシーが優勝した。翌日の優勝パレードに参加することができ、二階建てのバスの上から選手たちがトロフィーを持って、サポーターに手を振ってくれている。Jリーグでも活躍し、日本で引退したフェルナンド・トーレスが、僕らにセロリを投げてきた。くんぬやろ!ふざけてんのか!と思ったら、セロリを投げるのは、しあわせなことなのだ、みたいなことを、コーディネーターさんに教えてもらって、急に喜んだ。
それ以来のスタンフォードブリッジ。そして、現在のチェルシーのスポンサーは、横浜ゴムさんである。胸にYOKOHAMA TYRESの文字が燦々と輝いている。
四大リーグのビッククラブの胸に、日本のスポンサーの名前がついているのは、やはり誇らしいものである。この横浜ゴムさんがスポンサーの時期に、チェルシーのスーパーレジェンドのフランク・ランパードが監督になった。
その時のユニフォームの胸に輝いているロゴを、チェルシーサポーターは生涯忘れることはないだろう。ロケが中止になったので、時間ちょいと余ったから、スタジアムのファンショップでお買い物。
きつい作業である。(ばかやろ)こんなにつらいロケもない。笑
ただ、買い物。笑
雨も止んでいる。そしてスタジアム周りで撮影しようとするが、ミリ単位くらいで、警備員がチェックしにくる。1ミリでも敷地に入った撮影は許されない。どこの場所でも揉める揉める。笑
許可は取ってるのよ。笑
この日はチャンピオンズリーグ。普段はプレミアリーグ。放映権、スポンサーなどの問題があり、警戒がすごいのだ。特にチェルシーは高級住宅街なので、警備が厳しいのは尚更なのだろう。とにかく一つ一つ、来る警備員来る警備員がチェックするのだ。
撮影の最中に両チームのサポーターがどんどん集まって来る。まぁ、今のチーム状況から考えると、バイエルンが圧倒的に有利である。しかし、8年前の試合でもバイエルンが圧倒的に有利だった。内容もバイエルンが完全に押していた。だが、結果はチェルシーの勝利。
これがサッカーである。
入り口でも、揉めに揉めたが、笑、ようやく入れた。しかし、おりはまだしも、笑、何故か自分飯塚も特別席に通された。このチケットは横浜ゴム様が用意してくださったのだ。ありがとうございました。
いきなりスタジアム内のレストランに通された。テーブル番号も決まっており、スタッフの方が飲み物を聞きに来てくれる。白ワインを注文した、自分飯塚としあわせな乾杯をした。前菜が用意されていて、メインを決める。せっかくなんで、肉と魚を頼んで、シェアすることにした。
スポンサー招待のチケットの皆様は、大賑わい。みんなしあわせそう。メインも美味しくいただき、客席に。さすが、チャンピオンズリーグ。
ごつい戦いだった。
まぁ、想像通り、今回はバイエルンの圧勝だった。若く発展途上のチェルシーが、堅実なバイエルンに飲み込まれた。試合後も軽く撮影した。
日本人の学生が何人も観に来ていた。サイコーの思い出になったでしょう。
ちなみに番組でも何度か喋っているが、去年の1月にドストエフスキーの罪と罰という舞台を、リヴァプール出身のフィリップさんという演出家と一緒にやった。実は事前に連絡を取りあって、試合後に会うことになっていた。今は翻訳アプリがあるから、ほんとに便利である。
ありがとう、翻訳アプリ。
今はロンドンで舞台の稽古をしているそうで、彼女がロンドンに住んでいるので、一緒に暮らしているそうだ。みんなで飲もうということになり、フィリップの家で会うことになった。日本人がたくさんで夜中に押しかけ、迷惑だったろうが、気持ちよく迎えてくれた。
ウイスキーを飲もうと言われ、全員でウイスキーをストレートで飲んだ。海外では、基本的に酒は割らない。日本人は、ほとんどの酒を割って飲む。
初めてイギリスに来た時も、冷えたビールなんてどこにもないことにショックを受けた。今はどこにでも、冷えたビールはあるが、昔海外ではほとんどなかった。アイスコーヒーもなかったし。
韓国でも、焼酎の水割りなんて誰も飲んでなかった。みんなストレート。フィリップと慣れないウイスキーのストレートを、みんなでウィーウィー言いながら飲んだ。これもなんだか楽しい。2時間くらいお邪魔して別れた。
彼女と女性の友達もいた。二人とも不思議な、おのぼり日本人たちを優しく迎えてくれて、それぞれ盛り上がった。通訳いないと大変なので、ドミやんにも来てもらった。
ドミやんは、マンチェスターUのファン。フィリップはご存知、生粋のリヴァプールファン。
最悪の関係。
だが、不思議な日本人たちの存在が、二人に奇跡をもたらした。仲良く話している。笑
まぁ、このめんどくさいシュチエーションで、直に会話ができるってもの大きかったのだろう。笑
いい時間を過ごすことができた。フィリップは、今度日本で舞台をやるので、再会を約束して別れた。ウイスキーのストレートをけっこう飲んだ。
翌日起きたのは6時過ぎだった。珍しい。
羽田空港からのアルコール攻撃が功を奏したのか、朝ごはんの時間だったので、そのまま食べに行くと、みんないた。勝村さん、散歩の連絡くれなかったじゃないですか?
あぁ、なんかたっぷり寝ちゃった。連絡待ってたんですよ。と、ぷりぷりしてる。なんか、すみませんね。寝れちゃって。笑
明日はちゃんと時差ぼけてくださいね。はい。すみません。よくわからない会話しながら朝ごはん食べた。2日目はよく晴れている。昨日撮影できなかった、アビーロードへ。
すでに観光客が、何組もビートルズになっている。
今回は、ジャイアン勝村一人で撮影。そこにも日本人が数人いた。みんな楽しそうだ。観光名所なので、車も、邪魔な観光客に、優しく対応してくれている。そして、またスタンフォードブリッジに戻り、スタジアム見学。
横浜ゴムの関口さんが、丁寧にいろいろ説明してくださった。ありがとうございました。いいスタジアムである。どっしり構えているが、都会的であり、自信に満ち溢れている。その自信は、歴史に裏付けされているのだろう。
ここで、名選手、名監督がどれだけ戦ってきたのか。
そのピッチレベルに、日本からただのサッカー好きのおのぼりのおじいさん、ジャイアン勝村が立っている。身体が痺れている。これは年齢的な問題ではない。感動しているのだ。
フリットが、ホドルが、ヴィアッリが、モウリーニョが、ラニエリが、スコラーリが、ベニテスが、コンテが、サッリが、指揮をとった同じ場所に立っているのだ。
ピッチの中には入れないからね。監督の場所だからね。名残惜しいが時間が限られている。
そろそろ帰らないといけないって時に、ちょうどグラウンドの端を歩く、おじさんが近づいてきた。何をしてるかわかりますか?と聞かれた。
わからなかった。
スタジアムには鳩も来ます。鳩のフンがスタジアムを汚してしまうので、鷹を使って追い払っているのです。と、説明された。映像で見たことはあったが、実物を見るのは初めてだった。鷹匠のおじさんだったのだ。
すると鷹匠のおじさんが、やってみるかと言ってくれて、ごつい手袋を貸してくれた。なんと、奇跡的に鷹くんと戯れることができた。なんとラッキー!もう少し早くても、遅くても鷹匠さんにはいいタイミングで出会えなかった。
鷹くんの名前はブルー!
ブルーズと呼ばれるチェルシーで働くブルー君。これまたサイコーの体験をさせていただきました。ありがとうブルー君。
そして、またまたつらいファンショップでの、つらい買い物である。(ばかたれ)
金さえあれば、店ごと買いたい。笑
各々買い物を済ませて、マンチェスターに移動である。電車で2時間以上。恐ろしいスケジュールなのだ。ただ、楽しい。海外では、やはり電車に乗りたい。車は生活を感じない。電車の中も撮影しながらの移動。それにしても、電車が汚ない。笑
海外あるある。
こんなところでも日本の良さが滲みてくる。車体も窓も泥だらけ。日本で汚れた電車に乗ったことある人はほとんどいないと思う。特別な場合を除いてね。
日本あるある。
日本は本当に素晴らしい。気持ちよく、今後のスケジュールを確認する。まずはマンチェスターシティ関連。
ドキドキする。
昨シーズンは、シティとリヴァプールの強さが際立ち、信じられないシーズンだった。今季はリヴァプールの強さが際立っている。それでも、ペップのシティは魅力的である。運さえあれば、ここでチャンピオンズリーグのマドリー戦を観戦できたのだ。
だが、アウェイだったので、マドリーのサンチャゴ・ベルナベウで試合が行われる。ん〜、残念。エティハドの一番近くのパブでサポーターと観戦する予定になっている。
電車は、マンチェスターピカデリーに到着。
感慨深い。
この四半世紀、プレミアリーグをマンチェスターユナイテッドが席巻してきた。サー・アレックス・ファーガソン監督の長期政権。赤い悪魔と恐れられ、アウェイのチームは、ビビりながらこの駅に降り立ったのだろう。どうやっても勝てないアウェイのサポーターには、恐怖のスタジアム。
シアター・オブ・ドリーム。
マンチェスターユナイテッドのホームスタジアム。
オールド・トラフォード。
勇気のあるアウェイのサポーターたちが、微かな期待を抱いて降り立ち、当然のように夢破れて立ち去る場所。そして最近では、オーナーが変わり、世界最強のチームになった、マンチェスターシティの台頭。この駅は、アウェイのサポーターたちにとって、存在自体が未来永劫、忌み嫌われる駅なのだ。そんな駅にやって来たのだ。
もちろん、バズビー時代のマンチェスターユナイテッドのこともあるが、昔すぎて駅のことまでわからないから、そこは勘弁してちょ。身体の中の細胞が泡立ってくる感覚である。とりあえずホテルへ。
すぐに周りを散策した。細胞が喜んでいる。荷物をそれぞれ部屋に入れて、国立フットボール博物館へ。恐怖の駅、マンチェスターピカデリーのすぐ横にある。イングランドの歴史が詰まっていた。
展示品の中に、なんと、86年のワールドカップの時の、マラドーナのユニフォームが飾ってあった。
伝説の神の手のゴール。
伝説の5人抜きのゴール。
このユニフォームを着ていたのだ。映像だけでは語れない歴史。イングランドとアルゼンチン戦の意味。何故この試合がすごかったのか?何故アルゼンチンで嫌われていたマラドーナが、名声を取り戻したのか?
このユニフォームが歴史の証人なのである。
そんなユニフォームが、何故、イングランドで嫌われている男の、ただの反則である、ハンドで入れた得点を、神の手と呼んだ男のユニフォームがイギリスの博物館に飾ってあるのか?
実は試合後に、イングランドの選手がマラドーナとユニフォーム交換をしたそうだ。だが、あまりに周りの人間が怒っているし、マラドーナとユニフォーム交換したことが、怖くて言えなかったそうだ。笑
ほとぼりが覚めた頃に、名乗り出て、ユニフォームを提供したらしい。これもフットボールの母国の底力と言うしかない。笑
その選手がマラドーナとユニフォームを交換したおかげで、マラドーナの、ワールドカップの歴史的なユニフォームを飾られているのだ。他にも深い深い歴史が、このマンチェスターの博物館に詰まっている。
これはもう、映像を見ていただいて、しあわせな気持ちに一緒に味わっていただくしかない。見ながら白い山盛りのご飯を、三杯は食べられるでしょう。そして、いよいよエティハドの横にある、シティサポーターが集まるパブへ。
サポーターたちと飲みながらテレビ観戦である。フットワーク園畑が、危険のないように、シティのニット帽とマフラーを用意してくれた。さすがである。すでに辺りは暗い。エティハドが照明で浮かび上がっている。静まりかえってはいるが、エネルギーの胎動を感じる。ドキドキしてきた。
パブでは、荒々しいサポーターたちが、盛り上がっている。そんな中にテレビカメラが入っても大丈夫なのか?
不安は募る。試合開始1時間くらい前。周りの撮影を始めた。店の中にビビりながら入った。さぞかしコアなサポーターで盛り上がっているのだろう。
と、ドアを開けた。
あれ?す、少ない。おじいさんが何人かと、おじさん、おばさんが少し。
しかも、サックスのニット帽とサックスのマフラーと、手袋をはめ、完璧なシティサポーター装備をしているのは、日本から来た、おじいさん、ジャイアン勝村だけである。
拍子抜け。
少し話しを聞くと、みんな仕事してからくるから、そんなカッコはできないよって。
正論。
まぁ、スタジアムにも誰もいないし、テレビを観にわざわざパブまでは来ない。しかもチャンピオンズリーグ。プレミアリーグを応援したいけど、リヴァプールとの勝ち点差を考えると、優勝の望みはないし、気持ちの盛り上がりにも欠けるのだろう。
本当に、来てみないとわからない。
これがプレミアリーグで優勝争いをしている時の土曜日のホームゲームで、スタジアムに入りきれずに、なんて時は、ここがサックスのグッズ装備したシティサポーターで埋め尽くされるのでしょう。チャントを歌いながら。
昔、チェルシーの試合観ようと思って、スタジアムまで行き、ダフ屋からチケット買おうと思ったら、ダフ屋が一掃されていて、チケット買えず、スタジアムの横のパブで観た時は、すごい盛り上がりだった。マンチェスターユナイテッドと争っている時で、試合の合間にユナイテッドの試合が流れて、大ブーイング。ユナイテッドが勝っていて、チェルシーの画面に戻ると、観客席が映るたびに、味方のサポーターに向かっても大ブーイングしていた。
もっと応援しろよ、みたいな。
そのイメージが強かったからだが、生活しているサポーターは、臨機応変に対応するのだ。当たり前のことだ。正論。試合は、ご存知の通り、アウェイのマドリードでシティの逆転勝ち。しあわせにパブを後にした。
遅い夜ご飯はカレーに決まった。カレーは美味しい。タンドリーチキンも美味しい。僕らの知っているタンドリーチキンではないが、美味しい。笑
みんな疲労が相当溜まってきている。こんなタイトなスケジュールで動くことはあまりない。笑
だが、みんなしあわせそうだ。楽しくて仕方がない。もっともっといろいろ観たい。日本との違いを感じながら、みんな楽しんでいる。やはりイギリスでは、インド料理か中華料理だ。間違いない。
ホテルに戻り、爆睡した。目が覚めると5時だった。笑
しっかり時差ぼけしている。約束通り。みんなに連絡しようと思ったが、Wi-Fiのバッテリーが充電されていない。ちゃんと電源にケーブルつないどいたのに。
海外あるある。
誰にも連絡出来ず、朝散歩へ。真っ暗な駅の横を歩きながら、いろいろ想像する。空いている店を見つけて、カプチーノを頼む、日本よりもかなり寒いので、温かい飲み物が身体に入って来るのがわかる。身体が少しだけ温まる。力が少し湧いてくる。こんな感じは日本ではなかなか経験できない。
昔、サンタフェに行った時に、雪の中一人で散歩していた。街の色も景色も素晴らしく、楽しいのだが、死ぬほど寒い、5時過ぎに開いている店はない。
だが、楽しくて仕方ない。
しばらく歩くと、一軒だけぼうっとした灯りが見えた。スタバだった。急いで入った時の温かさは、今でも忘れない。カプチーノを頼んで飲んだ。カプチーノが身体に入って行くのがわかる。しあわせな瞬間。後から真っ白い息を吐きながら、新しいお客さんが入ってくる。
みんなその温かさに、ホッとする。その表情がみな素敵なのだ。記念にそこのコーヒーポットを買って帰った。しあわせなデジャブ。ホテルへ戻ると、みんなが朝ご飯食べてる。
勝村さん、なんで連絡くれないんですか!待ってたんですよ!電話!一人で散歩してずるいですよ。と、責められる。
せっかくのしあわせな気分をぶち壊しやがって!くんぬぉ!ブタやろうども!と叫ぼうかなと思ったけど、しあわせな気持ちがまさっていたのでやめた。ごめんごめん。Wi-Fiのバッテリーが充電されてなくて、部屋番号もわからなかったから連絡出来なかった。申し訳ない。と、心にもないことを上の空で話した。笑
明日は必ず連絡するから。
みんなで朝ごはんの続き。さっきからずっとフロントでドミやんが大きな声を出している。
まぁ普段からテンション高いし、よくしゃべるからそれほど気にしてなかったが、あまりにも長いから、ドミやんどしたの?と聞くと、柿ちゃんが、今日チェックアウトの約束なのに、明日になってたり、支払いでかなり揉めてるみたいです、と。
海外あるある。笑
まぁ、ドミやんに任せよう。マンチェスター最後の朝ごはんのBGMは、ドミやんの永遠の怒鳴り声だった。笑
ようやくチェックアウトが終わった。ドミやんが、少し痩せているように見えた。笑
そして、今朝は朝一からエティハドスタジアムの見学ツアー!チェルシーの時がかなり大変だったから、心配していたが、なんのストレスもなく円滑に進んだ。信じられないくらいに。だが、チェルシーのスタジアムも素晴らしかったので、どこのツアーもそれほどではないだろなと思っていた。
どこも同じようなもんだと、たかを括っていた。それが、あなた!誰でも入れるツアーなのに、VIP席にも入れるし、サービス満点!
なんでも言うことを聞いてくれて、こちらのことを最優先に行動してくれる。しかも、エティハドは、演出がすごい!
ただ見るだけでも面白いのに、そのエンターテインメントと言ったらあなた、もうテーマパークですよ。上質の。ドレッシングルームでは、選手たちと試合中のハーフタイムを共有しているような錯覚に陥る映像が流れるし、記者会見場では、ペップと二人で質問に答えているようなのだ。
ミラクル!大満足!すごい。
このエンターテインメントは、この演出は、日本のスタジアムでも参考に出来る。素晴らしいアイデアだ。感動して、お土産もたくさん買った。そして、おのぼりさんたち一行は、シェフィールドに向かった。
後編へ続く...
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しあわせな地獄【後編】
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